リハビリテーション

運動療法とは

運動療法は、食事療法、薬物療法と並んで、糖尿病治療の有力な手段です。とくに、日本人の糖尿病の 95% を占める、2型糖尿病の患者さんで、血糖コントロールが安定している人の場合は、食事療法とともに運動療法を行うと、血糖が下がるだけでなく、糖尿病のさまざまな症状が改善され、さらには、動脈硬化の予防、老化防止といった点でも効果があることが実証されています。

しかし、進行した合併症がある時には、運動がかえって病状を悪化させることもあります。何をどの程度行うのが効果的なのかを正しく理解し、適度な運動を上手に生活に取り入れて、糖尿病をよくし、快適な毎日に変えていきましょう。

どんな効果が得られるのでしょうか?

運動はみなさんの最大の悩みである高い血糖値を低下させると同時に、肥満の解消に大きな効果があります。また、糖尿病の患者さんがかかりやすい血管合併症などの予防や進行を抑える効果もあります。さらに、体を動かすのが楽になり、日常生活も快適になります。そうした効果を、以下にまとめてみました。

  1. 血糖を下げる効果
    運動時のエネルギー源として、血中のブドウ糖(血糖)を使うため、運動すると血糖が下がり、その効果は翌日まで持続します。また、定期的に続けることで、筋肉や脂肪など各組織の細胞がもつ、ブドウ糖や脂肪をエネルギーに変える能力も一段と高まるため、その分インスリン量を節約でき、膵臓の負担を軽減できます。

  2. 体重を減らす効果
    運動時のエネルギー源として、脂肪(遊離脂肪酸)も使うので、運動を定期的に続けると、体重を減らすことができます。また、血液中の中性脂質や動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールを減らし、かわって動脈硬化を予防する善玉コレステロールが増えてきます。

  3. 心臓や肺の働きを強化する効果

  4. 血圧を下げる効果

  5. 足腰など下肢の筋力を強くして、老化を予防する効果

  6. 血液の循環をよくする効果

  7. ストレス解消など気分転換の効果

  8. 体力がついて動きが楽になるため、日常生活が快適になる効果

などがあります。

やっていい人、いけない人

運動は、さまざまな治療効果を高めることができる反面、病状によっては逆に高血糖や低血糖を引き起こす原因になったり、病状を悪化させてしまう場合があります。2型糖尿病で、合併症がなく血糖コントロールが安定している人や、合併症があっても程度が軽ければ、運動は大層効果があります。

しかし、糖尿病のさまざまな合併症、とくに増殖網膜症など進行性の網膜症、血清クリアチニンが高いなど進行した腎症、自律神経障害がある場合には、運動がかえって症状を悪化させることがあるので、病状が安定するまで運動はお勧めできません。また、血糖が安定していた人でも何らかの原因で血糖が高くなり、尿ケトン体の出現や、血中ケトン体の上昇が認められた時をはじめ、感染症で高熱が出るなど急性の変化があった時も、病状が落ちつくまでは運動は控えてください。

また、1型糖尿病の人、糖尿病性以外の合併症のある人、たとえば、血圧がいちじるしく高かったり、心臓や肺の病気があったり、腰や膝の関節が悪い場合なども、運動内容に注意や制限が必要ですから、主治医の判断と指示に従ってください。

自転車エルゴメーター

自転車エルゴメーター
自転車エルゴメーターは体重が直接膝や腰に負担ならないことから、足腰の調子の悪い患者様や手術後の患者様の治療トレーニングに有効な器械として、多くのリハビリ室に設置されています。そのほか得られる効果として、有酸素運動として効率よく体力向上の為のトレーニングができるため、体力の低い方の、体力低下防止・体力向上・体重コントロールがあげられており、近年では転倒防止に大きく貢献していると考えられている大腰筋が鍛えられることが、テレビなどで注目されています。手前が普通のエルゴメーター 、奥がリカンベント式(またがないで乗れる、座れる)エルゴメーターです。

低周波治療器(ポラリスカイネ)

ポラリスカイネ
最先端の低周波治療器です。 肩、肘、膝、手の関節の痛み。肩こり腰痛などにも効果があります。 筋肉の緊張にも効果があります。座骨神経痛、50肩、肩こり、むち打ち、リュウマチ、寝違え、腰痛症、帯状疱疹後の神経痛、変形性膝関節症、術後疼痛

糖尿病における運動療法

運動をするためには、エネルギーが必要です。つまり筋肉を働かせるための燃料として、血液中のブドウ糖(血糖)が必要となるのです。したがって、運動すると、血液中の余ったブドウ糖が筋肉の細胞内に取り込まれて、この結果血糖値の下降をきたすのです。糖尿病の運動療法の基本的なことはここにあります。

ブドウ糖が、筋肉などの細胞の膜を通過して、細胞の中にはいるためには、ある種のタンパク質(GLUT4)が必要です。健常者では、食事によって血糖値が上がると、それに見合ったインスリンが膵臓から分泌されます。このインスリンが、細胞にあるインスリン受容体と結合すると、ブドウ糖を細胞内に取り込む命令が出されます。この命令を受けて、細胞内部にあるGLUT4が細胞の表面に出てきて、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んでいるのです。

しかし、糖尿病の状態では、インスリンの働きが悪いため、インスリン受容体を介した命令がうまく伝わらず、このGLUT4が細胞の表面に出てこられません。しかし、運動をすると筋肉の収縮そのものが刺激となって、インスリンの働きが多少悪くても(インスリン受容体からの命令を介さずとも)、細胞の表面に出てくるGLUT4の数が増えてきます。また、運動を続けるうちに、細胞の中にあるGLUT4の総量も増えてきますので、血糖の取り込みが多くなるわけです。

どのような運動をどの位?

運動の種類は、動的で全身を使う有酸素運動(早足、ジョギング、水泳、サイクリングなど)。 糖尿病の運動療法の主な目的は、低下しているインスリンの効き目を良くすることにあります。運動によりインスリンの働きが良くなる部位は、運動した部分の筋肉に限られます。したがって、できるだけ多くの部位を動かすような全身運動がお勧めです。しかも、ブドウ糖を燃料としてエネルギーに変え、同時に脂肪まで燃やそうとしたら、十分酸素が必要です。酸素をあまり吸い込まない短距離走や瞬発的な動きではなく、ゆっくりと酸素を吸い込みながら全身を使うジョギングや歩行、水泳などが良いでしょう。 運動量は、1日平均150キロカロリー(1週間あたり1050キロカロリー)を目標に!

150キロカロリーの運動量

  • 歩行(80m/分):30~40分
  • 自転車(平地):30~40分
  • 軽いジョギング:20分
  • 歩くスキー:20分
  • テニス:20分
  • なわとび:10分
  • 水泳(平泳ぎ):10分

運動療法の注意点

血糖値は食後1時間から1時間半位でピークに達します。 食後1時間くらいに運動を開始すると、高くなる血糖を抑えられます。 糖に対する運動療法の効果

およそ48時間位持続するといわれています。1日おき、あるいは週3回などから始めてみるのも良いでしょう。

急性の合併症

血糖コントロールが極端に悪い場合(血糖250mg/dl以上または尿中ケトン体が陽性のとき)、高血圧(最高血圧180mmHg以上)、眼底出血がある場合、腎臓機能の低下がある場合など、運動により急性の合併症を起こすことがあり、運動療法を禁止したり制限した方がよい場合があります。運動療法開始前には、主治医と良く相談することが大切です。

松阪市にて総合内科、糖尿病内科、血液内科、消化器内科、循環器内科を診療する「かいばな内科クリニック」をご案内します。

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